『私服警官、京大でつかまる』

お知らせ : 京都新聞

「ああ、京大だな(笑)」と思ったのと同時に、コメントを見て一般人の警察権力に対する理解が大丈夫なのか不安になった。


治外法権じゃあるまいし」とか「特定の場所では犯罪捜査しないのか」とかあるが、実に単純な話として「勝手に敷地に入ったら警察官でも不法侵入を宣言される」のであって、権利者の意向を無視して立ち入って捜査するためには裁判所からの令状を持ってこないといけないのである。したがって「大学の関係者」である学生が不法侵入の現行犯で私人逮捕を行ったとしてもおかしくないわけだ。


で、なにが「ああ、京大だなぁ」なのかといえば、ここで「許可していない」というのが基本のスタンスである点なのだ。多くの場合、公共的で人の出入りの多い施設では治安の維持のために警官の立ち入りを基本的に認めていて、「警察官立ち寄り所」とかいう本当なのかはったりなのか分からないプレートが貼ってあったりする。

しかし、「大学の自治」という観点から外部権力の干渉を最低限にする事を表明しているので、京都大学は「立ち入る場合は事前の通告をせよ」という事を申し入れているし、「勝手に入ってはいけない」という事が生徒の側にも知られているわけだ。


なお、「入るなら正式な令状持ってこい」というのも正当な権利なので、単に事前に通告せよというのは異常に厳しいという事もない。というか、私企業の敷地でも「入って良いですか」という許可を取ってからでなきゃ当然のように入れないだろう。今回の場合はたんなる抗議活動の観察らしいので、最近の歴代学長のゆるい感じからすると申し入れれば許可が出るような気もする*1し、そもそも学内に立ち入らずに公道から観察するというのが京大付近における公安の活動スタイル*2なので、うかつに敷地に踏み込んだのはちょっと間が抜けていたのかもしれない。


京大は、警官が大学構内に立ち入る場合は府警から事前に通告を受け、大学職員か学生が立ち会う取り決めにしているという。

とあるので、学生の中には普段立ち会いをしているものもいるわけだ。その取り決めと、ひょっとするとその警官を知っていた学生が取り押さえたのかもしれないと思った。


まぁ、「犬の散歩をしている近所のばあさん」とかが普通に敷地を通り抜けていくのが京大の風景なので、警官だけがはじき出されている不思議な光景なのだが(笑)


なお、

警官が構内にいる間、京大付近に一時、数十人の機動隊員を乗せた車両が待機した。

というのは京大あたりでは特に意味もなく待機している事があるのであまり気にされない。私服を確保したのが昔ながらの中核派!とかだったら身体の危険があるので待機してたんだろうが、そんな武闘派は何十年も前に消滅しているだろう。



あと、逮捕監禁じゃないのかという話があるが、そもそも正当に拘束している分には成立しない*3し、そもそも学校に居た時間の大半(三時間ほど)は副学長と話していたらしい。おそらく、申し合わせを無視した行動を取った事に対する言い訳とか押し問答とか、この問題の決着の付け方とか色々あったと思われる…。

Webの噂程度の情報だとこの時間には「やってきた警備課の上官と副学長が話をした時間」が含まれているらしい。副学長が連絡して上官が来るまでの時間も相当あったろうな…。府警本部で相当頭を抱えたはず。*4

杉万副学長によると、午後1時ごろに職員からの連絡で駆けつけたところ、警察官は20〜30人の学生とともに教室内にいた。学外に出たのは午後4時10分ごろという。

京大の構内に警察官、学生とトラブル 大学「誠に遺憾」:朝日新聞デジタル


なお、警察官が職務の実行中に正当な理由なく法を犯すと、一般よりきつい処分が下る。法の守り手が法律を守っていないと示しがつかないので…*5

*1:このあいだ変わったばかりなので、いまの基本方針が厳しくなっているのかもしれない。

*2:校門の前によく不審者が居て中をうかがっているのですが、無線機を持っている場合は多分公安の私服なので警察に通報しなくても構いません(笑) ああ、今回のは警備課だったらしい。ざっくりいうと公安でいいらしいけど。

*3:それで成立するなら私人逮捕という制度が成立しえない

*4:https://twitter.com/KYODAI_SYAKEN/status/529531883940372480

*5:もちろん、問題になった場合に限る。