確率の話をしてみよう1 (場合分け)

最近話題になった、「赤ん坊が生まれる確率」の話をしてみよう。
「ある妊婦が30時間以内に赤ん坊を産む確率が87%とした場合、一時間のうちに生まれる確率はいくらか?」という奴だ。



計算したい状況である「30時間以内に子供が生まれる」という状況を場合分けすると以下のようになる。

  • 1時間目(最初の時刻から一時間以内を指すとする)に子供が生まれた
  • 2時間目(最初の時刻から一時間経過後、二時間以内とする。以下同様。)に子供が生まれた
  • 3時間目に子供が生まれた
  • 30時間目に子供が生まれた


まず、生まれる子供は一人に決まっている、と仮定しよう。
これらの30通りの場合分けは全ての場合を網羅しているだけでなく、完全に分離されている(ある場合の中に他の場合が含まれていない)ことが分かるはずだ。

たとえば、1時間目に子供が生まれていれば他の時間帯では子供は生まれる事がないし、2時間目に子供が生まれているのならやはり他の時間帯では子供が生まている事はない。


では次に、「生まれる子供が何人か分からない」と仮定しよう。
この場合、場合分けを次のように変更してみる。

  • 1時間目に一人目の子供が生まれた
  • 2時間目に一人目の子供が生まれた
  • 3時間目に一人目の子供が生まれた
  • 30時間目に一人目の子供が生まれた

これらも完全に分離されている事が分かる。


すなわちこれら30パターンの状況が発生する確率をそれぞれ計算して合計すれば、「30時間以内に(一人目の)子供が生まれた」確率が計算できる。これは確率を計算する際によく行われる考え方である。


ここで重要なのは「完全に分離されている」という点である。



6面体のサイコロを6回振ってみよう。サイコロを振る度に1の目が出る可能性は6分の1だが、サイコロを六回振ったときに少なくとも一つは1の目が出る可能性は6分の1の6倍…すなわち「必ず出る」というわけではない。これはすなわち

  • 一つ目のサイコロで6が出る
  • 二つ目のサイコロで6が出る。
  • 六つ目のサイコロで6が出る。

という場合分けが「きちんと分離されていない」からである。一つ目のサイコロで6が出ても、二つ目のサイコロでやはり6が出ている事がある。そのような「場合分け」では確率の計算には使えないのである。



さて元の場合分けに戻って、「i時間目に子供が生まれる(もしくは一人目の子供が生まれる)確率をb_iとすると、問題文から

\sum_{i=1}^{30} b_i = 0.87

となる。



さて、ここまで計算を進めても、答えは全く出ない。なぜなら、我々にはb_iがどのような特徴を持っているのか分からないので、b_iの合計が分かっても何も言えないのである。


これが数学の問題なら、たいてい「どのような特徴を持っているか」が記述されているのであるが、今はそれが明示されていない。次は「確率がどのような特徴を持っているか」を考えてみよう。