リビジョニスト問題

ウソツキを尊重するのは,寛容でも何でもありません。ホロコースト否定論の主張は歴史学の専門家からは歯牙にもかけられていないのです。あなたは,「原爆投下なんてなかった」という見解が尊重される事を望みますか?

http://d.hatena.ne.jp/Mukke/20090320/1237532520

歴史学の専門家がこれを取り扱わないのは、ヨーロッパにおいて違法とされているからです。


ホロコーストをめぐる戦いで、実際にどのように扱われているかを見るのがよいでしょう。「イラク戦争イスラエルロビーのごり押し」とか平気で書ける田中宇さんですら論評を書きませんでした(笑)

EUでは、欧州議会のフランス人の極右議員が「私はガス室がなかったとは思わないが、私は専門家ではない(ので結論を出せない)。この件は、歴史家たちに議論させてみるべきだと思う」と昨年10月*1に発言した件をめぐり、議員としての不逮捕特権を解かれ、起訴されそうになっている。

ホロコーストをめぐる戦い

「あった」と言う前提で発言しているのに、不逮捕特権まで否定されるようなことになっています。


さすがに逮捕されるのは怖いですからね。


その結果、表だって何か言うのは明らかに問題のある主張をする人達(ドイツでは存在自体が違法であるネオナチ勢力とか)ということになります。結果、そんな主張をまともに取り扱うことはありません。




引用元の記事(negative_dialektik はてな村出張所から始まる一連の記事)を見るにつけ、問題にしているのは「原爆投下があったか」というレベルの問題ではなく、「原爆投下はどのような意図で行われたのか」「原爆投下で直接死んだ人数は何人か」というレベルの問題です。

引用したtanakanews.comの記事に書かれている記載を見れば分かるとおり、ヨーロッパにおいてはこのレベルの議論をすることすら許されません。


なお、ホロコーストという言葉については、「ガス室の存在」がセットとされる場合が多いため、「(収容所はあったし人はたくさん死んだが)ガス室はなかった」という主張を「ホロコースト否定」という場合があるので注意が必要です。


私はナチスユダヤ人の強制収容を行ったと思っていますし、ガス室についてもあったのかもしれない*2と思っていますが、ヨーロッパの基準に照らせば立派にリビジョニストになります。なぜなら、「被害者の数はちゃんと調べた方がいい」と思っているし、「ガス室があったのかどうかも、疑問に思う人がいるのだからちゃんと調べてみればいい」と思っているからです。

少なくとも後者の立場はフランス人議員の発言と完全に一致しますから、不逮捕特権もない私がヨーロッパでそんなことを公に発言すると、即逮捕ということになりかねないでしょう。

*1:古い記事なので、もう結論は出たと思うが…

*2:わざわざそんな回りくどいことをしなくてもいいと思うので、なかったかもしれないとも思う。毒ガスなんていう取り扱いの面倒なものを使わなくても、捕虜を殺すことは簡単だったはずだからだ。そもそも何人殺されたかが重要で、殺した方法は枝葉末節にも思える。それに、アメリカで死刑に使っているということは、毒ガスはむしろ人道的な処刑法に属するのではないだろうか?なぜ毒ガスでなければならなくなったのかという助言があったので撤回。