確率の話をしてみよう3 (条件付き確率)

なぜ「同程度」と仮定した計算から「後になるほど生まれる可能性が高い」という結果が生まれるのか?

それは「後になるほど生まれる可能性が高い」という表現は厳密に言うと「それまでに子供が生まれていなかった場合、その時間帯に子供が生まれる可能性は高い」という「条件付きの確率」などと呼ばれる値だからである。


それに対して我々が「同程度である」と仮定したのはあえていうと「条件のつかない」確率である。「条件のつかない」確率は「その条件が発生する確率」と「その条件下での確率」を掛け合わせて求める。



ここからしばらくは、妊婦の話から離れて条件付き確率を説明する。




簡単な例を作ってみよう。一組そろったトランプからジョーカーやスコアカード*1を除いた52枚をスート毎に4つに分ける。*2この中からカードを一枚選んで、スペードのエースを引く可能性を考えよう。



あなたはまず、「スペードの山」がどれであるのかを当てなければならない。裏から見てもどれがどのスートなのか分からないから、当たる確率は単純に4分の1だ。

見事スペードを当てたとすると、今度は13枚の中からエースを当てなければならない。この確率は13分の1だ。

ではトランプ一揃いからスペードのエースを選ぶ確率は?52枚から一枚を選ぶので52分の1だが、これは次のような計算もできる。

\frac14 \times \frac1{13} = \frac1{52}



この例では条件付き確率を考える意味はよく分からないだろう。ではこんな例に修正する事を考えよう。

「やり方はほぼ前回と同じ。だが実はスペードの2がなくなっていて、スペードの山は12枚しかない。ただし、山の高さは区別がつかないのでスートを選択する確率は変わらないとする。」

確率の設問で「但し書き」がついているのは恒例のようなものだ。「一枚少ない山があったら分かるはずだ」というズルはなしだ。どうしても気になる人は、高さの区別がつきにくい置き方をしてあるとか、中の見えないケースに入っているとか、そういう対策がされていると考えてほしい。


さてこの場合、スペードのエースを選ぶ可能性はいくらか?スペードを当てる可能性は変わらないが、その後エースを当てる可能性は12分の1になっている。だから、

\frac14 \times \frac1{12} = \frac1{48}


になる。51分の1ではない。ではその差はどこから現れたのか?実は「カードの山を用意した人物が12枚しかないスペードの山を作った」事がその原因なのだ。言い換えると「スペードのエースは必ず枚数が少ない山にある」という確率の偏りを作ったことだ。一枚足りないカードを13枚の山3つと12枚の山1つにスートを確認せずに分けたとしても、「スペードのエースが12枚しかない山にあるとは限らない」という状況になる。この場合には確率はちゃんと51分の1になるのだ。


計算してみよう。スペードのエースが「13枚の山に入った確率」は51分の39になる。多い方の山は51枚中39枚あるからだ。この状況下で「スペードのエースの入っている山を当てる確率」は変わらず4分の1。その後「スペードのエースを当てる確率」は13分の1だ。

スペードのエースが「12枚の山」に入った確率は51分の12。「その山を当てる確率」は4分の1。「山の中からスペードのエースを当てる確率」は12分の1。

条件付き確率を発生確率と掛け合わせ、全て合計するとちゃんと51分の1になる。

 \frac{39}{51} \times \frac{1}{4} \times \frac{1}{13} + \frac{12}{51} \times \frac{1}{4} \times \frac{1}{12} = \frac{1}{51}

*1:ブリッジ用のものが入っていることがあるのだ。

*2:ハートだけ、スペードだけ…という風に分ける。スートとはトランプのマークのことだ。複数形はスーツ。